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正欲 – 朝井リョウ 著〜ある事故死をきっかけにそれぞれの人生が重なり始めるが、その繋がりは“多様性を尊重する時代”にとってひどく不都合なものだった

文芸

朝井リョウの新境地ともいえる『正欲』は、「普通」や「当たり前」の価値観に囚われず、個々の内面に潜む多様な欲望とそれを巡る葛藤を描いた問題作です。現代社会における「正しさ」とは何かを問いかけ、人々の心の奥に潜む本音を浮き彫りにするこの作品は、読む者に強烈な印象を残します。

あらすじと見どころ

物語は、異なる立場に置かれた複数の人物の視点から進行します。それぞれが抱える欲望や性の悩みを隠し、世間に迎合しながら生きる中で、何が「正しい」のかに直面していきます。朝井は、社会が一方的に押し付ける「普通」から外れた欲望がもたらす孤独や自己肯定感の欠如を繊細に描きつつも、その裏に潜む偏見や偽善にも鋭くメスを入れます。

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正欲

見どころは、登場人物同士が交差する瞬間の緊張感や、彼らの心情が暴かれる瞬間のリアリティです。登場人物それぞれの視点が交錯する構成は、読者に「正しさ」の多面性を強く意識させます。

作者や背景情報

朝井リョウは、若者の心情をリアルに描く作風で知られ、早稲田大学在学中に『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビュー、『何者』で第148回直木賞受賞した作家です。彼の作品は、どれも現代日本が抱える社会問題を背景に持ち、時にユーモアを交えながらも鋭い批評性を帯びています。『正欲』では、彼が今までの青春小説とは異なる、よりシリアスで挑戦的なテーマに挑んでおり、これまで以上に深い人間観察が光ります。

読後の感想と評価

『正欲』を読み終えたとき、価値観の揺さぶりと読後感の重さに圧倒されました。登場人物の感情が繊細に描かれているだけでなく、「個々の欲望を他者はどこまで受け入れられるのか」という普遍的な問いを投げかけてくるため、単なるフィクションを超えた体験となります。読者にとっては、自分の内面をも見つめ直すきっかけになるでしょう。決して軽いテーマではないものの、その分、強い印象と余韻を残します。

おすすめポイント・対象読者

社会の「正しさ」に疑問を感じている人
多様な価値観を受け入れることに関心がある人
自己や他者との向き合い方を見つめ直したい人
また、朝井リョウの既存ファンには新しい一面を感じられる作品であり、青春小説から一歩進んだ大人向けの小説を求める読者にもぴったりです。

類似作品の紹介

『コンビニ人間』村田沙耶香
異なる価値観と社会の「普通」に対する疑問を描く点で共通しています。

『火花』又吉直樹
自己と他者の間で葛藤する主人公の心情描写が類似しており、深い内省を促す作品です。

『私の消滅』中村文則
個人の存在や欲望を追求し、内面の闇を探る作品として『正欲』と響き合います。

まとめ

『正欲』は、読む者に対して「正しい欲望とは何か」という問いを投げかけ、その答えを簡単には与えません。しかし、その曖昧さこそが現実の複雑さを反映しており、まさに現代を生きる私たちにとって考えるべきテーマです。心に残る物語を求める人や、価値観を揺さぶられたい人にとって、ぜひ一度手に取ってほしい一冊です。

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