『鱗姫』 – 嶽本野ばら 〜 美しさを蝕む病、そしてその代償

嶽本野ばらの『鱗姫』は、美しさと恐怖が交錯する独特な世界観を持つ小説です。この作品は、読者を魅了すると同時に戸惑わせる、平成の耽美派による異色の美肌ホラーとして注目を集めています。

あらすじと見どころ

物語は、美貌の娘・楼子が初潮とともに襲われる「鱗病」を中心に展開します。龍鳥家に伝わるこの忌まわしき病の秘密と、血を分けた兄妹の禁じられた絆が描かれています。自慢の肌を蝕む病の恐怖に脅える楼子が発見する凄惨な治療法が、物語の大きな転換点となります。

見どころは、美しさへの執着と恐怖、そして兄妹の複雑な関係性の描写にあります。嶽本野ばら特有の耽美的な文体で綴られる物語は、読者を独特の世界観に引き込みます。

作者や背景情報

嶽本野ばらは、平成の耽美派として知られる作家です。代表作に『ミシン』『下妻物語』『エミリー』などがあり、特に『エミリー』は三島由紀夫賞候補作となりました。若い女性を中心に人気を集め、ファッションや美意識に関する造詣の深さも特徴的です。

読後の感想と評価

『鱗姫』は、美しさへの執着と恐怖を巧みに描き出した作品です。嶽本野ばらの繊細な筆致により、読者は主人公の内面と外見の葛藤を鮮明に感じ取ることができます。ホラー要素はあるものの、それほど怖くはなく、むしろ美意識や人間関係の複雑さに焦点が当てられています。

おすすめポイント・対象読者

この作品は、美しさや外見に関心のある読者、特に10代の女性に強くアピールするでしょう。また、耽美的な文体や独特の世界観を楽しみたい読者にもおすすめです。ホラー小説としてだけでなく、人間の内面や美意識について考えさせられる作品として評価できます。

類似作品の紹介

嶽本野ばらの他の作品、特に『ロリヰタ。』や『ハピネス』も、美意識や若い女性の内面を描いた作品として『鱗姫』と通じるものがあります。また、美と恐怖をテーマにした作品として、三島由紀夫の『金閣寺』なども併せて読むと興味深いでしょう。

『ロリヰタ。』 by 嶽本野ばら
ファッションと文学的表現が融合した短編集。

まとめ

『鱗姫』は、美しさへの執着と恐怖、兄妹の複雑な関係性を描いた独特な作品です。嶽本野ばらの繊細な筆致と耽美的な世界観が、読者を魅了します。美意識や人間関係の複雑さに興味のある方、特に若い女性読者におすすめの一冊です。