2019年に発表された「魔眼の匣の殺人」は、今村昌弘氏のデビュー作「屍人荘の殺人」に続く、神紅大学ミステリ愛好会シリーズの第2作目です。本格ミステリーファンの間で高い評価を得た前作の続編として、大きな注目を集めました。
あらすじと見どころ
物語は、神紅大学ミステリ愛好会の新メンバー、剣崎比留子を加えた一行が、謎の研究施設「魔眼の匣」を訪れるところから始まります。そこで彼らは、予言者と恐れられる老女サキミから「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」という不吉な予言を聞かされます。
外界との唯一の繋がりである橋が焼き落とされ、9人の訪問者とサキミ、そして世話役の神服が孤立する中、予言通りに死者が出始めます。緻密に計算された殺人のトリック、アリバイ、動機が絡み合い、読者を圧倒的な謎解きの世界へと誘います。
作者や背景情報
今村昌弘氏は1985年長崎県生まれの作家です。岡山大学卒業後、放射線技師として働きながら執筆活動を行い、2017年にデビュー作「屍人荘の殺人」で第27回鮎川哲也賞を受賞しました54。デビュー作は各種ミステリーランキングで1位を獲得し、本格ミステリー界に新風を巻き起こしました。
読後の感想と評価
「魔眼の匣の殺人」は、前作以上の緻密な構成と巧妙なトリックで読者を魅了します。予言の真偽、殺人の動機、そして登場人物の心理描写が見事に絡み合い、最後まで目が離せない展開となっています。特に、ラストの意外性は読者を驚かせ、「あっ」と言わせる瞬間を用意しています。
おすすめポイント・対象読者
本作は、本格ミステリーファンはもちろん、緻密なプロットと心理描写を楽しみたい読者にもおすすめです。特に、前作「屍人荘の殺人」を楽しんだ読者にとっては、さらに進化した謎解きと人物描写を楽しむことができるでしょう。
類似作品の紹介
今村昌弘氏の他の作品として、シリーズ第3作「兇人邸の殺人」や、「でぃすぺる」があります。また、2024年7月には、シリーズの人気キャラクター明智恭介を主人公とした短編集「明智恭介の奔走」が発売されました。
まとめ
「魔眼の匣の殺人」は、今村昌弘氏の才能が遺憾なく発揮された作品です。予言、密室、複雑な人間関係が絡み合う本作は、本格ミステリーの醍醐味を存分に味わえる一冊となっています。デビュー作で高い評価を得た著者の力量が、さらに磨きがかかった形で表現されており、ミステリーファンにとって見逃せない一作と言えるでしょう。