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独裁体制から民主主義へ – ジーン・シャープ著:独裁体制に立ち向かう”非暴力”という武器

文芸

”非暴力”が”暴力”に立ち向かう手段になるなんて、素人にはピン!とこない話ではありますが、世界では実例が結構あるのだそうな

マハトマ・ガンディーの研究から独自の非暴力理論を体系化することで戦略的非暴力闘争を提唱したジーン・シャープの著書「独裁体制から民主主義へ」をみていきましょう


NHK 100分 de 名著

今回もNHK教育テレビ100分 de 名著からのご紹介(笑)

2023年1月に放送された「独裁体制から民主主義へ」(ジーン・シャープ著)を取り上げます

解説は、清泉女子大学名誉教授で公益財団法人日本民藝館理事の中見 真理 先生

NHKテキストの「はじめに」では、2022年2月ロシアのウクライナ侵攻から1989年の東西冷戦までさかのぼり、テロや紛争を軍事力で解決しようとする世の流れを示します

そして、今回ご紹介するジーン・シャープが非暴力による戦略的非暴力闘争論が取り上げられるのです

具体例に見る”非暴力”の効果

NHKテキストの中では、具体例として「ミャンマーの民主化運動」「セルビアのミロシェビッチ追放運動」「リトアニアの独立回復運動」などを大きく取り上げて非暴力闘争を紹介します

なかでも個人的には「リトアニアの独立回復運動」の際に行われた「歌う革命」には大きな衝撃を受けました

【5分くらいでわかる地理】エストニア「『歌う革命』に集まった国民は30万人! エストニア独立のために作った『人間の鎖』が赤軍の心中を阻止した!」【ヨーロッパ】


(過去にNHK辺りでコンサートの様子が紹介されていたのですが、さすがにそれは落ちてませんねw)

歌を歌うというのは、ジーン・シャープの「非暴力行動198の方法」(NHKテキストにも収録)でも取り上げられた手法で、世界中から注目を集めることで独裁体制側が非人道的な行為に及ぶスキを埋めるのだとか

この他、バルト三国を600kmに渡って手をつないだとされる人間の鎖(バルティック・チェーン)も知りませんでした

また、小規模な(初期段階の)運動では2004年の「ウクライナ革命」や2014年に台湾で行われた「ひまわり運動」、同年、香港で行われた「雨傘運動」なども小さな成功を積み上げる大切な行動として紹介されています

非暴力闘争の実情

はたして”非暴力”が本当に”暴力”に立ち向かえるものなのか?

やはり素人にはきになるところです

NHKテキストの後半に「非暴力闘争の『勝率』」として、現ハーバード大(執筆当時はデンバー大学)のエリカ・チェノウェスと米国平和研究所のマリア・ステファンが行った研究の成果が紹介されています

1900年から2006年までの間に政府を打倒(もしくは抑圧者から領土を開放)した抵抗運動の中から参加者が1000人以上の例を挙げ、調査したのだそう

そして2008年に論文として軍事中心の安全保障に関する専門誌にその結果が発表された

 ・暴力的抵抗の勝率26%

 ・非暴力抵抗の勝率53%

歴然の数値が導かれたのだそう

この数字から何を読み取るか?は人それぞれに視点があるでしょうが、すくなくとも暴力を伴う改革の方が非暴力闘争よりも成功率は低い

どうせ成功率が低いのなら、わざわざ多くの血を流す必要など、どこにもないじゃないか……と個人的には思ってしまう

だけど、多分、血の気の多い人のほうが声は大きいでしょうから、どうしても何かを改革する時に先導するには、やはり声の大きい方……つまり、暴力的活動に偏ってしまうんだろうな、と

いきり立ってしまった血の気の多い人を落ち着かせるのは骨が折れちゃいますから、血の気が多い人が熱くなってしまう前に、このジーン・シャープ著「独裁体制から民主主義へ」を熟読させておくのが得策と言えそうですね(笑)

海外に目を向けると、すでに暴力に暴力で抵抗している地域がいくつもあるわけで、ここからこの「『独裁体制から民主主義へ』を読んで!」って騒いでも後の祭り

導火線に火がついてしまうもっと手前で、先導するであろう運動の中心人物に読んでいて欲しかったものです

もっとも、オレンジをシンボルカラーとして2004年にウクライナで行われた「ウクライナ革命」も、結果的(間接的)に現在の戦争状態につながってしまったことは残念でなりません

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