「別府温泉を日本一にした男」の半生を綴る物語
奇想天外なアイデアを元に七転八倒の人生を軽快な関西弁と共に読み進めながら、現代ビジネスに応用できそうな気遣いを学べる(かも?)小説です
新しく商売を始めるには間の悪い明治四十四年(1911)十月から、物語の幕は開ける
すっかり頭も禿げ上がった48歳の油屋熊八が大阪から別府へ移り住むのだ
読み始めると2ページ目にさりげなく、宿泊客の靴を磨く熊八が描かれている
なかなか客人に気付いてもらいづらそうな気遣いではあるが、縁起は良さそうな配慮ではなかろか
といっても、不器用な熊八にできる仕事が薪割りと布団の上げ下げ、そしてこの靴磨きなのだから貴重な頑張りどころといった感じ
そんな感じで物語は進んでいくのですが、セリフに軽快な関西弁が多く(つまり熊八がよくしゃべるw)文章は軽いし、またフォントサイズもやや大きいようでスイスイ読み進められる
場面の描写も最低限といった感じなので、物語もホイホイ展開していくので、じれったがりの人に読んでもらってもいけるんじゃなかろか
コメディ?ビジネス書?
物語の時代背景が明治維新の5年前からなど、そっくりそのまま現代のビジネスに置き換えることはできないにしても、成功者の生い立ちや失敗体験を物語として楽しむのはいい刺激になるのではなかろか
物語冒頭に出てきた旅館での靴磨きのような些細なサービスに気付ける繊細な感性と、奇想天外なアイデアが同居した熊八の人物像を追体験できることは、読者にも気づきになることでしょう
本のタイトルに「別府温泉を日本一にした男」と書かれてしまっていることから、おおよそ結末はハッピーエンドと推測できてしまうのですが、途中での失敗体験のスケールのデカさは物語に彩りを添えるどころではない規格外さ(笑)
明治時代にこれだけのスケールのアイデアを持つことが出来た熊八さんのスゴさはどこで培われたのか
勉強できるだけ(結果的に勉強だったりしますがw)が成功への道筋ではない、というひとつの成功例として体験しておくのは無駄にはならないと思います